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2011年3月31日 (木)

龍谷大学図書館所蔵『山田盛太郎文庫』付属資料-2(11年6/18改訂)

 山田先生所持の『ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日』について

 学者の折、よく山田先生からは何かに付け『ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日』を読んだか?と問い詰められて、答えに窮したことがあった。 読んだことが無くはなかったのではあるが、読んでも、その複雑な、もって回ったような表現に戸惑いがあったので、いつも途中で投げ出していたからである。 『資本論』を始めとするマルクスの他の所謂経済学の書物から来る印象との間に言い知れぬ違和感を懐いていたからだ。 従って、かなり長い間、“ブリュメール”は私にとって複雑な存在であり続け、いつかは倒さねばならない相手でありながら、どちらかと言えば、それを口実にズルズルと“また明日”を決め込んでいた本でもあった。
 山田文庫付属資料を整理中、山田先生の所持本を見つけ出した。 それは山川均氏による日本語訳(注:写真(1)。アルバムにはこれと下記のものを含めて関係の写真を4枚掲載しています)で、元々一冊の本(現在その原本を探査中)であったものを、此箇所だけ抜粋して切り離し、ゼムクリップで上の端を留めたものであった。   写真(2)写真(3)写真(4)

 稿においては勿論書誌的な事実を述べ立てるつもりはないが、私達は現在下記の3冊のよく知られた“ブリュメール”の日本語訳をもっている。
1)岩波文庫版 伊藤新一、北条元一訳
2)国民文庫版 村田陽一訳
3)平凡社ライブラリー版 植村邦彦訳
 最後の植村氏の訳業による一書だけが初版からの訳で、他の2冊は最終版である第二版(初版との対照付き)からの訳である。
 植村氏の平凡社版には詳しい解説があるため、無駄な解説は差し控えるが、初版と第二版との間には、歴史的時間の経過による表現あるいは字句の差し替えや削除が発生している。 それは、植村氏が指摘されておいでのようにこの書物がマルクスによって書かれた対象と目的の時間差による推移によるものであろう。

 山田先生の所持に掛かる山川訳を読んでみると、第二版だけに拠ったものではなく、初版の文章が所々に混ざった混成版であることが分かる。

 諸賢が山田先生とこの“ブリュメール”を共に連想される場合、大きな共通項として思い浮かべられるのは次の二点であろう。
1)ボナパルティズム
2)ナポレオン的観念
 当資料(山田先生所持の山川氏訳)が、もつ一つの特徴は、この山川訳を始めから終わりまで目を通すことで、上記二点についてある光を投げかけるものである点であり、かつ、傍線等を伝ってゆくことで山田先生による極めて特徴的な読み方(本来マルクスが初版に於いてして欲しかったであろうと思われる)がされている点を読み取ろうとすれば読み取れることであろう。 この点からは、本来は初版がベストと思われるけれど、当時としては入手が難しいものの山川訳が混成版であった点が大いに役に立ったと後知恵として言えるのではないだろうか。

 当稿は、正式な資料作成中の所謂速報でもあり、個々の踏み込んだ論点についての論評はここでは差し控えたいと思いますが、この山川訳の“ブリュメール”という書物を通して山田理論再評価(科学的な吟味を基礎にした批判と継承)への一つの小径が展望できる可能性が横たわる(諸賢の現在の立ち位置にもよりましょうが)ことをお知らせしておこうと思います。
【PS】
 当稿をUP後、下記の情況の記載を忘れていたため、追記する。
 龍谷大学所蔵の山田盛太郎文庫付属資料中の書籍、とりわけ戦前に出版されたと思われる日本語訳のマルクス関連の書籍は、どれもこれも表紙がなく、必要な部分だけを本から切断された状態で残っている(掲載の写真を参照して下さい)。
 調査を開始した当初においては、雑誌からの抜粋等も多数あるため、さほどの注意を払わなかった。 勿論、本が何時購入されたのか、また、切断が何時行われたのか、というチェックポイントがあるものの、時間の経過と共に、ふと気になりだしたので、添え書きを致します。
 山川訳の『ブリュメール』の元の本がどのようなものであったのかは、小生の探査がまだ進んでいないため、申し訳をするのも情けないのであるが、岩波文庫版の訳者「はしがき」に拠れば、1928年(昭和3年)の改造社版マルエン全集第5巻所収のものではないかと思われる(山川氏訳の戦後版では料紙や活字等を含め不自然に思われる)。 この点については改めて正確な報告をします。
【2011年6月18日改訂】記事追加

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