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2012年10月 7日 (日)

山田文庫における『日本資本主義発達史講座』(2012,10/12加筆)

 谷大学深草図書館所蔵の山田盛太郎文庫には『日本資本主義発達史講座』(以後『講座』)が所蔵されている。
 山田先生が編集者として名を連ねておられるから当然だと言えばそれまでなのであるが、どう見てもただ一箇所に纏められたとしか言いようの無い書庫での分冊の情況から整理は始められなければならなかった。

 整理の方針を見定めるために二度程の事前の点検をしておいたため、整理の第一段階としては分かり易い配本順(『講座』は目次とは関係なく、個々の論稿が出来上がり次第、順に印刷製本し、分冊としてとして七回に分けて予約者に配本された)に分冊を集合させ、まず、分冊の揃い具合(欠本があるのかどうか)を調べ、次に、各分冊の中の山田先生による読書痕の情況についての調査を行った。

 その結果、ほぼ『講座』の分冊が揃っていることが判明。 但し、二冊の分冊が発見されなかったが、その内の一冊は著者からの献本で埋められているため、結果的には一冊だけ分冊が無いだけで、殆どの『講座』分冊が存在することが判明した。
 また、文庫には『講座』の内容見本も二部存在していたが、月報は各一部ずつしか存在せず、且つ、山田先生の論稿のある第四回配本分の月報が欠落して存在せず確認できなかった。(文庫の調査は最後に総ての書籍を一冊一冊調べてゆく際にこの欠落部分が出てくるかどうかを留意したい。)
 同一の分冊が複数冊存在するものが幾つか存在する(分冊のダブりがある)が、一方では何故この特定の分冊だけがここに複数冊(ダブっている冊数は様々)あるのかという疑問が湧き上がるものの、現在の残されている資料からは、この疑問に答え得るようなものは何も発見できなかった。

 次に山田先生の読書痕についての調査に移った。
 確認できる山田先生の読書痕の有無については後続の報告をお読み頂きたいのであるが、例え痕跡が無い場合でも、各分冊は読まれてはいたが、ただ読書痕がないだけなのか、そうではなく全く読まれなかったのかについては定かには判定はできなかったが、下記の記録においては分冊中に誤植の訂正等の記載以外の書込がある場合を読書痕として扱い、それについて記録をした。

 当稿に於いては、痕跡の内容やその論評には踏み込まず、技術的な面での記録に止めてその成果を報告する。

 谷大学山田盛太郎文庫所蔵の
 『日本資本主義撥達史講座』各分冊の情況


 山田文庫に於ける『講座』各分冊の現状については下記の記号を以てその状態の概要を示す。
   【記号】
 ○:山田氏による読書痕を有するもの
   (この場合、読書痕の多寡は問わない)
   (誤植の訂正についての記載は、これを読書痕とは見做さなかった)
 ●:山田氏による読書痕を持たないもの
 ×:山田文庫中には見付けることが出来なかった分冊
 △:蔵書中に複数冊存在する分冊
 ◎:原著者より献辞を付けて山田氏に贈られたもの
 ◆:所蔵されている分冊が改訂版であるもの


 以下、状況の報告。

●△ 『日本資本主義発達史講座』内容見本

   ※ 第一回配本(昭和7年5月20日)
●   服部之総   幕末に於ける世界情勢及び外交事情
○◎ 平野義太郎 明治維新の變革に伴ふ新しい階級分化と社會的政治的運動
●   山田盛太郎 工業に於ける資本主義の端初的諸形態マニュファクチュア・家内工業
○   小川新一   勞働者の状態及び勞働者運動史(上)
●   風早八十二 財政史
○   井汲卓一   最近における經濟情勢と經濟恐慌(上)

   ※ 第二回配本(昭和7年6月25日)
○◎  小林良正   交通機関の撥達と内外市場の形成=展開(上)
○   大塚金之助、渡邊謙吉 資本蓄積と經濟恐慌
○       小川信一   勞働者の状態及び勞働者運動史(下)
○       田中康夫   戦争史
○       井汲卓一   最近における經濟情勢と經濟恐慌(下)
○       大塚金之助 世界資本主義撥達史文獻解題

   ※ 第三回配本(昭和7年8月6日)
○      羽仁五郎   幕末に於ける社会經濟状態 階級關係及び階級鬪争(前編)
●      羽仁五郎、伊豆公夫 明治維新に於ける制度上の變革
●      玉城 肇    明治維新の諸變革が生活様式に及ぼした諸影響
●◎   小林良正  交通機関の撥達と内外市場の形成=展開(下)
×◎○平野義太郎 ブルジョア民主主義運動史
●      服部之総   条約改正及び外交史
●      秋田雨雀、山田清三郎 文化運動史

   ※ 第四回配本(昭和7年11月14日)
○      羽仁五郎   幕末に於ける社会經濟状態 階級關係及び階級鬪争(後編)
○      羽仁五郎   幕末に於ける政治的支配形態
○      田中康夫   政黨及び憲政史
×      山下徳治   教化史
○      小倉金之助、岡 邦雄 自然科学史
      第一編 数学史(小倉金之助)、第二編 自然科学史(岡 邦雄)
●      細川嘉六   日本社会主義文献解説

   ※ 第五回配本(昭和8年2月20日)
○      服部之総   明治維新の革命及び反革命
○◎   平野義太郎 明治維新における政治的支配形態
●      山田盛太郎 工場工業の撥達
○◆   秋笹正之輔 植民地政策史
●◆   鈴木小兵衛 最近の植民地政策・民族運動
○      大内兵衛、土屋喬雄 明治財政・經濟史文獻

   ※ 第六回配本(昭和8年6月24日)
●      中島信衛   封建的身分制度の廢止、秩祿交際の發行及び武士の授産
●◎◆小林良正   明治維新に於ける商工業上の諸變革
○△   稻岡 暹    農民の状態及び農民運動小史
○◎   平野義太郎 議会および法制史
○      大塚金之助 經濟思想史(要領)
●      西 雅雄    最近における階級諸運動
○      小野武夫   農民史料解説

   ※ 第七回配本(昭和8年8月26日)
●◆   羽仁五郎   幕末に於ける思想的動向
●      羽仁五郎   幕末に於ける政治鬪争
●      山田盛太郎 明治維新に於ける農業上の諸變革
●◎   山田勝次郎 農業に於ける資本主義の發達
●△   丸山一郎   鑛鉱山業の發達
●      木村恒夫   銀行其の他金融業の發達
●      鈴木小兵衛 最近に於ける國際情勢
○◎   相川春喜   農村經濟と農業恐慌
●◆   坂本三善   最近における政治情勢史
○△   平野義太郎 索引(事項・統計・批判論點)

 【補註】
(1)第三回配本分の平野義太郎氏の分冊「ブルジョア民主主義運動史」はセットとしての分冊は存在しなかったが、平野氏からの献呈の辞があるものが存在し、この分冊には山田氏の読書痕が存在する。
(2)第四回配本分の山下徳治氏の分冊「教化史」は文庫中に存在しなかった。
(3)月報は第四回配本分(山田氏の「斷章―日本資本主義の考察に於ける一つの視角―」が掲載されているもの)だけが何故か存在しない(それ以外の月報は総て存在する)。
(4)分冊のダブりの情況。(何故このようなダブりが生じたのかと言う点については現状からは判定できるような材料を見いだせなかった。)
  ([ ]内は配本回数を、( )内はダブっている部数

 ○内容見本 (1)
 ○稻岡 暹:農民の状態及び農民運動小史 [6](5)
 ○丸山一郎:
鑛鉱山業の發達 [7](3)
 ○索引 [7](6)
(5)内容見本(ダブり分は除く)と第五回配本分の月報には小判型の「山田」の印が押されている。
(6)分冊の表紙か裏表紙かに紐による結束の痕跡が確認できるものは下記の分冊(計六冊)である。([ ]内は配本回数)
 ○小林良正:交通機関の撥達と内外市場の形成=展開(下) [3]
 ○秋田雨雀、山田清三郎:文化運動史 [3]
 ○中島信衛:封建的身分制度の廢止、秩祿交際の發行及び武士の授産 [6]
 ○小林良正:明治維新に於ける商工業上の諸變革 [6]
 ○稻岡 暹:農民の状態及び農民運動小史 [6]
 ○鈴木小兵衛:最近に於ける國際情勢 [7]
(7)第七回配本分(最終配本分)の分冊「索引」は、配本時の函には「索引(事項・統計・批判論點)」と書かれているため上記の一覧表もそれに倣った。 また、「索引」の裏表紙にある奥付には著者として「日本資本主義撥達史講座 編集部代表者 平野義太郎」、との記載がある。

PS (8)以上を纏めると、山田氏の読書痕を持つ分冊は計24冊、読書痕が認められない分冊が計22冊、これ以外には書込のある「索引」と紛失した分冊の「教化史」(山下徳治著)で総計の48冊となる。(2012,10,12 加筆)

 以上の結果を第七回配本分の「索引」に掲載されている総目次の順に並べ替えると次のようになる。(但し、読書痕以外の記号は省いた。[ ]内の数字は配本回数を表す。


 『日本資本主義発達史講座』(項目および執筆者)
明治維新史
1、幕末史
 ○ 羽仁五郎  幕末に於ける社会經濟状態 階級關係及び階級鬪争(前・後編)[3、4]
 ○ 羽仁五郎  幕末に於ける政治的支配形態[4]
 ● 服部之総  幕末に於ける世界情勢及び外交事情[1]
 ● 羽仁五郎  幕末に於ける思想的動向[7]
 ● 羽仁五郎  幕末に於ける政治鬪争[7]

2、明治維新變革史
 ○ 服部之総  明治維新の革命及び反革命[5]
 ● 羽仁五郎、伊豆公夫 明治維新に於ける制度上の變革[3]
 ● 中島信衛   封建的身分制度の廢止、秩祿交際の發行及び武士の授産[6]
 ● 山田盛太郎 明治維新に於ける農業上の諸變革[7]
 ● 小林良正   明治維新に於ける商工業上の諸變革[6]
 ● 玉城 肇   明治維新の諸變革が生活様式に及ぼした諸影響[3]
 ○ 平野義太郎 明治維新における政治的支配形態[5]
 ○ 平野義太郎 明治維新の變革に伴ふ新しい階級分化と社會的政治的運動[1]

資本主義撥達史
1、資本主義經済の撥達史

 ● 山田勝次郎 農業に於ける資本主義の發達[7]
 ● 山田盛太郎 工業に於ける資本主義の端初的諸形態マニュファクチュア・家内工業[1]
 ● 山田盛太郎 工場工業の撥達[5]
 ● 丸山一郎   鑛鉱山業の發達[7]
 ○ 小林良正   交通機関の撥達と内外市場の形成=展開(上・下)[2、3]
 ● 木村恒夫   銀行其の他金融業の發達[7]
 ○ 大塚金之助、渡邊謙吉 資本蓄積と經濟恐慌[2]

2、資本主義の撥達が勞働者農民に及ぼした影響並にその運
 ○ 稻岡 暹   農民の状態及び農民運動小史[6]
 ○ 小川新一  勞働者の状態及び勞働者運動史(上・下)[1、2]

3、政治史
 ○ 平野義太郎 ブルジョア民主主義運動史[3]
 ○ 田中康夫   政黨及び憲政史[4]
 ○ 平野義太郎 議会および法制史[6]
 ● 風早八十二 財政史[1]
 ● 服部之総   条約改正及び外交史[3]
 ○ 田中康夫   戦争史[2]
 ○ 秋笹正之輔 植民地政策史[5]

4、文化史
 ● 秋田雨雀、山田清三郎 文化運動史[3]
 ○ 大塚金之助 經濟思想史(要領)[6]
 × 山下徳治   教化史[4]
 ○ 小倉金之助、岡 邦雄 自然科学史[4]
   第一編 数学史(小倉金之助)、第二編 自然科学史(岡 邦雄)

帝国主義日本の現状
1.● 鈴木小兵衛 最近に於ける國際情勢[7]
2.○ 井汲卓一   最近における經濟情勢と經濟恐慌(上・下)[1、2]
3.○ 相川春喜   農村經濟と農業恐慌[7]
4.● 坂本三善   最近における政治情勢史[7]
5.● 鈴木小兵衛 最近の植民地政策・民族運動[5]
6.● 西 雅雄    最近における階級諸運動[6]

史料解説
 ○ 大塚金之助 世界資本主義撥達史文獻解題[2]
 ○ 大内兵衛、土屋喬雄 明治財政・經濟史文獻[5]
 ○ 小野武夫   農民史料解説[6]
 ● 細川嘉六   日本社会主義文献解説[4]

○ 平野義太郎 索引(事項・統計・批判論點)[7]


 【追加報告】
 上記調査中において、分冊の表紙(表或いは裏に)に十文字の跡を見付けた。
 総ての分冊について調べると、はっきりと断定できる痕跡を持つものが計6冊あることが判明(ただし、この痕跡が表表紙にあるものと、裏表紙にあるものとがある)。
 痕跡のあるものを列べてみると、明らかに何らかの素材による紐状のものによって十文字に結束されていたことが分かる(素材には撚られたものであることが痕跡から明らかに分かる[例えば麻紐のような
]ものと、太い筋の痕跡があるが、その素材を特定しかねるものとがある)。
 この結束がどのような時期に山田先生によって為されたのか、また、この結束を何時誰が解除したのかという点については、判定できるものを発見することが出来ず、現時点では不明である。 また、複数の結束の情況についても判定できるものが発見されなかった。 他方、図書館側からは、これらについての記録や情報を得ることは出来なかった。

 各分冊は経年のために痛みがあるものがあり、紙が弱くなっていて取扱が難しいものが多い。
 また、上記の結束があったとしても、分冊は直立した情況で保管されていたようで(塵が天部にのみ付着している)、これは当稿著者の想像ではあるが、山田先生の書庫から搬出される折には相当の塵が上に積もっていたように思われる。

【PS1】 追加の報告事項
 山田文庫所蔵、『日本資本主義発達史講座』の第七回配本分分冊の「索引」の一冊は、山田先生によって『日本資本主義分析』の索引作成のための原稿として、しかし、どちらかと言えば原稿と言うよりは予備原稿にあたるものと言えよう。 しかし、確定稿ではなく、ザッと荒く項目を書き出したと言うべきであろうか。(2012,10,10 加筆)

【PS2】 追加の報告事項
 昭和7年5月20日の第一回配本の分冊平野義太郎著「明治維新の變革に伴ふ新しい階級分化と社會的政治的運動」には57頁と58頁に削除部分がある。 山田文庫所蔵の平野氏からの献呈本にはこの両頁の削除がされていない頁分が挟まれている。(2012,10,12 加筆)

【PS3】 追加の報告事項
 山田氏が分冊の著者より献辞を付けて贈られた分冊(計9冊)は次の通り。
 (注:括弧内の数字は配本回数を表す)
平野義太郎 明治維新の變革に伴ふ新しい階級分化と社會的政治的運動(1)
小林良正   交通機関の撥達と内外市場の形成=展開(上) (2)
小林良正   交通機関の撥達と内外市場の形成=展開(下) (3)
平野義太郎 ブルジョア民主主義運動史(3)
平野義太郎 明治維新における政治的支配形態(5)
小林良正   明治維新に於ける商工業上の諸變革(6)
平野義太郎 議会および法制史(6)
山田勝次郎 農業に於ける資本主義の發達(7)
相川春喜   農村經濟と農業恐慌(7)
                                                            (2012,10,12 加筆)
 以上、技術的な点に絞った記録に留めた。 個々の分冊に於ける読書痕の内容については極めて興味深いものも多々存在するが、今回はそれを控え、機会を改めたい。 何度も加筆を加え見苦しくなったことについては何卒ご寛恕を賜りたい。

[2012,10,10] 後補
加筆
[2012,10,12] 後補
加筆

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