この春以来この図書館へ通い詰めている。 当館が所蔵する山田盛太郎文庫中の未整理の資料(段ボール箱7つ分)を整理するためである。
 雑誌や書籍からの抜粋、手書きの手稿、地図、統計書類の山、抜き刷り、授業用のレジュメ等々のものが私を待っていた。
 かつての山田先生の書斎にあって、殆ど余人の目に触れたことがないこれらの書類の山(約800点あまり)に向かい、来る日も来る日もそれを眺めていると、山田先生の息づかいが伝わってくる。 引用資料として知っていても現物を見ることが初めてのもの、先生の読み跡や書き込みが言い知れぬ興奮を誘い時の経つのも忘れてしまう。
 やっとの事で全体を把握し、現在公開のために整理段階に入った。 しかし、思いもかけない資料達を前に、ついつい手が止まってしまい、本当に我を忘れて吸い込まれるように読みふけっていると、後ろから突然先生の声が聞こえる。 「中塚君、どうだ、少しは捗ったかね?」