登始めたのがもう夕方だった。 途中で切り上げて下山したが、もうすぐそこまで夜は迫っていた。 神立の辻の地蔵堂まで下りてくると、夕闇せまる中に辛うじて地蔵堂がぼんやりと浮かび上がっている。 こんなに暗くなってこのお堂を見たことがなかったので1枚写真を撮ろうと思った。 ところが、一人のお婆さんが前を横切り山手の方へと登って行く。 お婆さんをやり過ごすまで待とうかと思ったが、早く帰りたかったのと、直ぐに真っ暗になりそうだったので、夕闇とお婆さんの取り合わせもいいかと思い、お婆さんに合わせてカメラ位置をシフトさせ、何メートルか先にいたお婆さんを確認してシャッターを切った。 お気の毒にも、フラッシュがパッと光ったためにお婆さんはビックリして思わずこちらを振り返った。 しまった、申し訳ないことをしたな、と思いながらも、私はそのまま家まで帰った。  夕食後、PCで写真を改めていると妙なことに気付いた。 なんと、お婆さんが映っていないのである。 そんなに遠くない道の真ん中にお婆さんがいて、撮影後彼女とは間違いなく目が合った。 が、しかし、このたった1枚しか撮らなかった写真には道の真ん中を歩いていたはずのお婆さんはおろか、猫の子一匹さえも映っていなかったのである!(実際の明るさよりも少し明るめに画面を加工したにもかかわらずである!)